DELAND |
FLORIDA |
(DLD) |
デランドは古い町並みの残るダウンタウンや、フロリダ州内で一番早くビジネス学科を取り入れたステッソン大学などがある歴史的な町です。 ダウンタウンには古い建物の小さな店舗が軒を連ね、ショッピングや散策を楽しむ人で賑わっています。 ダウンタウンから郊外へと続く大通りには大型ショッピングセンターが建ち並んで、ダウンタウンの旧街と対を成す 「現代の町」 が形成されています。 このように、郊外でも都市開発はかなり進んでいますが、周辺にはまだ多くの自然が残されていて、自然の湧水が噴き出す多くの泉が存在します。 その泉の中でも特に有名なのが、ダウンタウンから南へ13キロのところにあるブルー・スプリングス州立公園(Blue Springs State Park)で、冬期に温かい湧水を求めて遡上してくるマナティーが見られる公園として知られています。 この公園は州立公園のため入園料が必要で、車一台につき4ドル、歩行者・自転車の方は1ドルかかります。 その入園料を払う料金所(公園のゲート)には、その日のマナティーの数が表示されていて、私が訪れた時には 「100」 となっていました。 この公園はマナティー見物の訪問者で大変混雑します。 駐車場への車両台数が限られているので、ゲートにたどり着くまで30分ほど待たされました。 そのゲートに入る前に、道路が線路をオーバークロスするところがあるのですが、その線路はアムトラックのデランド、サンフォード間の路線(管理はCSX Transportation)です。 道路が渋滞していたので、林の中を真っすぐに延びる線路をゆっくりと眺めることが出来ました。 その跨線橋を越えた所で汽笛が聞こえてきました。 後ろを振り返ると、林の隙間からアムトラックの2階建て車両(スーパーライナー)がチラチラと見え、一瞬のうちに過ぎ去っていきました。 この路線で自動車運搬車を連結していない短編成のスーパーライナーはサンセット・リミテッド号だけなので、あの列車はサンセット・リミテッド号のロサンゼルス行きでしょう。 別に列車の時刻を気にしていた訳ではないのですが、こんな所で週3便の列車を偶然に見れたのは幸運でした。 正直言うと、マナティーを見るよりも感動しました。 デランドのアムトラックの駅はダウンタウンから東へ5キロ離れた林の中にあります。 駅前通りに寂れたバーが一軒あるだけで、周囲は木々に覆われています。 周りに何もない駅ですが、アトランティック・コーストライン時代の古びた駅舎が健在で、驚くことに有人駅となっています。 アムトラック係員のいる有人駅なので、チケットカウンター、待合所、トイレ、公衆電話などの施設は整っていますし、バゲッジの取り扱いもしています。 この駅舎は1916年に建てられた初代木造駅舎の置換えのために1925年に建てられたもので、レンガと漆喰を使用した茶系の渋い建物です。 1981年に建物の一部が火災に遭い駅舎が使用不能になったので、アムトラックはトレーラーを使用した簡易事務所に移りました。 駅舎はすぐに修復されることなく10年が経ち、駅舎の傷みがひどくなったので解体という案が出ましたが、デランド住民の寄付による改修工事でようやく駅舎は直り、アムトラックも事務所を駅舎へと移すことが出来ました。 それにしてもアムトラックは10年間もトレーラーの仮駅を使っていたということで、何とも気が長い話ですが、路線の管理が CSX Transportation、駅舎は自治体所有という複雑な管理体系のため、アムトラックとしてもどうすることも出来なかったのでしょう。 まあ、管理体系云々というより、アムトラック自体が連邦政府による多額の援助によってかろうじて運行しているようなものなので、駅舎の修復に関しても簡単にお金を出せるという立場ではないですが。 この駅はほんとうに長閑な佇まいをした静かな駅で、時間が経つのを忘れてのんびりとしてしまいます。 アムトラック係員がいるという安心感もあって、駅の質としてはトップクラスに入ると思います。 南方向を撮った写真に左側へ分岐する線路が見えるかと思いますが、それはデランド市街へと続く引込線です。 その引込線の先端まで行った事があるのですが、数両のホッパー車が停まっていました。 デランドから東へ35キロほど進んだ大西洋岸には観光都市デイトナビーチ市があります。 この都市は年間を通じて様々なイベントがあり、大きなイベントになると数10万人という単位の訪問者を集めます。 いわゆるイベント都市ですが、そのイベントに賭ける人々の情熱は尋常でなく、単にイベントがある楽しい都市というよりも、どこか宗教的で、聖地として崇められている都市なのです。 いつかはデイトナで勝つことを目標にしているナスカー(自動車レース)のレーサー、自分のハーレー(アメリカン・スタイルの大型バイク)でデイトナを走るのを楽しみにしているバイカー、大学の春休み期間にデイトナで羽目を外そうと計画している大学生など、これらの人たちにしてみると、やはりデイトナは憧れの地なのでしょう。 一般受けする観光地ではなく、少々マニアックで偏った人々から愛される町、そういう全米に於いてもかなり特殊な性格を持った都市がデイトナビーチです。 このデイトナビーチとアムトラックのデランド駅は 「Amtrak Thruway」 によって連絡しています。 このアムトラック・スルーウェイというのは、アムトラックの鉄道駅とアムトラックの列車が訪れていない都市とを結ぶために設定された連絡交通機関で、アムトラックが列車と通しでチケットを発行できますし、列車への接続が保証されるという利点があります。 連絡する都市の特徴に合わせてバス、鉄道(もちろんアムトラック以外の会社)、船などが選択されます。 このデランドとデイトナビーチ間のスルーウェイ・サービスは、両都市がUSハイウェイ92号線で結ばれているのでバスが充当されるのが一般ですが、利用者があまり多くないからか、アムトラックの時刻表には次のような記述があります。 「Provided by local taxi companies」、つまり地元のタクシー会社が運行しているということです。 このようにタクシーがアムトラック・スルーウェイに当てられるのは他に例がありません。 タクシー運行なので運賃は高めに設定してあるようで、アムトラックのホームページで調べてみると35ドル(2003年11月)という金額が出てきました。 他の同距離を走るアムトラックバスの運賃は10ドルから15ドル位なので、それに比べるとかなり割高です。 またこの35ドルというのは片道1人分の運賃なので、2人では70ドルとなってしまいます。 デランドとデイトナビーチ間のタクシー運賃は約50ドルなので、2人以上でこの区間を使用する時はアムトラック・スルーウェイを使わずに、普通にタクシーに乗った方が安く上がります。 |
駅情報: |
所在地 |
2491 Old New York Avenue |
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経緯度 |
北緯29.02度 西経81.35度 |
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標高 |
9m |
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人口 |
27031人 (2010年統計) |
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駅員 |
有人駅 |
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営業時間 |
9:00 - 19:00 毎日 |
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駅舎 |
レンガ・漆喰造駅舎、1925年建造 |
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乗降客数 |
28663人 (2011年度) |
アムトラック列車情報: |
列車名 | 経路 |
[ New York, NY - Florence, SC - Orlando, FL - Miami, FL ] |
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[ New York, NY - Columbia, SC - Orlando, FL - Miami, FL ] |
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[ Orlando, FL - Houston, TX - San Antonio, TX - Los Angeles, CA ]注: Orlando~New Orleansは運休中 |
駅舎正面 |
駅舎は1925年建造 |
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駅舎南東側 |
駅舎ホーム側 |
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駅舎ホーム側 |
チケットカウンターと待合所 |
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DelandはDaytona Beach乗り換え駅です |
マイルポスト750 |
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ニューヨーク方面 (北方向) |
オーランド・マイアミ方面 (南方向) |
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駅前通り (Old New York
Avenue) |
待合所に飾ってあった1935年のデランド駅の写真 |
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ブルー・スプリングス州立公園 |
悠々と泳ぐマナティー
(ブルー・スプリングス) |
CSX Transportation --- Deland Short Line |
アムトラックのデランド駅から、ミシガン・アベニューというダウンタウンの北側まで CSX Transportation の貨物引込線が延びています。 6キロほどの短い路線で、別にこれといった特徴がある線でもないのですが、たまたま友人が近くに住んでいて観察する機会があったので紹介します。 日本ではかなりの数の引込線が廃止されて久しいですが、貨物鉄道大国のアメリカでは、星の数ほどの引込線が存在し、全てを取り上げていたらきりが無いのですが、この路線のように縁があったものに関しては紹介してみたいと思います。 この路線の終端部分、写真1から写真4の区間は、線路の上面は錆びていて、使われていないような雰囲気があります。 しかし、写真2にある踏切警報機はかなり立派なものを使用していますし、配電の箱には電源ランプが点いていたので、もしかすると不定期にこの終端(写真1)まで列車が来ているのかもしれません。 幹線路線にはない風情がある引込線。 この路線もそんな雰囲気を持った引込線のひとつです。
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終端から西をのぞむ (写真1) |
終端(東)方向をのぞむ (写真2) |
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すでに使用されていない倉庫への引込線 (写真3) |
木々のトンネルをくぐり雰囲気が良い (写真4) |
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ホッパー車が留置されている (写真5) |
東方向をのぞむ (写真6) |
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林の中を走ります (写真7) |
本線からの分岐、デランド駅にて
(写真8) |
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